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第4話|サルが後背位をすると熊野市あたりに僕が流れ着く

旧号

前説

回を進めるごとに読者半減キャンペーンが無事に奏功し、この時点でどうにか8分の1にまで減らすことができた。

さて、問題はあなただ。一体いつになったら脱落してくれるのだろう。できる限り早めにそうなってくれると嬉しい。こんなジャンクな文体を読み続けていたらそのうち精神までメタボになっちゃいますよ?

とはいえ、書き手としては最後まで読んでもらいたいというのもまた事実。だが、そのために文体を改めるつもりは乳頭ない。メタボなあなたを愛でるのもまったく本意ではない。

そうなるとやはり、ここいらでいっちょあなたに戻るボタンを押していたただく他ない。さ、早く。ほらほら。あ、ちょっと。どこ押してるのさ。そこは前上腸骨棘だよ。

本編

で、結局あなたはこうしてまた懲りずに読み進めてしまうわけだ。何も得られないと知りながらも。ならば仕方がない。そんなドMで欲しがりやさんのあなたの期待に、こちらもできる限りの悪文でもって真摯にお応えするとしよう。

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2022年8月30日(火)

ボリューム満点の朝食に定評のある「ビジネスホテルおかもと」を出たのは午前9時過ぎのこと。それから僕はまっすぐ小田原城に向かった。小田原城を訪れるのはこれで2回目。前回は阿部君と来た。確か10年くらい前に。

そのときにこんな一幕があった。それは天守閣前のサル舎を二人でぼけっと眺めていたときのこと。山の中央に陣取っていたボスザルがよっこらセックスと言わんばかりに、そのへんのメスザルを捕まえてはもれなく後背位という蛮行に及び始めたのだ。

一匹あたりわずか約5秒。サルティンバンコならぬサルチンバッコン。が、メスザルは不動明王のごとく一切微動だにしない。僕らはそのライン作業のような流麗さと淡々さに感服すると同時に心の底から笑った。

そのあとに小田原城内も見学したが、今となってはもうサルの後背位しか記憶に残っていない。

いつかもし人間以上の存在が現れたとしたら、僕らの一部もきっと観賞用として動物園に入れられるに違いない。法律も倫理も理性も及ばないその完全に自由な場所で、あなたなら一体どうするだろうか。僕はきっと思う存分にその機会を活かし、最終的にはサルさえ引くほどの存在に成り下がることだろう。

設定をミスり完全に白飛びした小田原城(SIGMA DP2x)

本題とは一切関係ないサルの後背位の話だけで400字近くも費やしてしまったが、これもまたご愛嬌ということでお許しいただきたい。

そんな調子でしばらく小田原の街をぶら~りしたあと、改札近くのみどりの窓口横の壁にもたれかかり、熊野に行くかどうかについて思案し始めた。

そう、この期に及んでなお僕はびびっていた。一体何に?無計画でふらりと遠くへ行こうとしている己の奔放さに対して。

ねえカムパネルラ、歳を取るほど臆病になるのはどうしてだろうね?これまで当たり前にできていたことたちが今じゃもう全部ギネス並みに感じられるんだよ。

だからさ、もうこのまま家に帰ってもいいかな?いいよね?別に誰にも迷惑かけてないもんね?よーし、じゃあこのままスイカでピッと改札を通って、

 

ならぬ。

 

スイカでピッと改札を通って、

 

ならぬ。

 

スイカを使おうとしたが、不思議な力によってかき消されてしまった。その衝撃たるや、洞窟奥のボスを倒したあとにリレミトが使えなかったとき以上。

どうやら例のあれは強制イベントらしい、と僕は観念して新幹線の改札方面へとぼとぼと歩き始めた。思案を始めてから1時間が経っていた。

こだま715号に乗り込むと、不幸にも大学生だらけの車両を選んでしまったらしく、控えめに言ってサル山状態だった。まあでもいきなり後背位を見せつけてこない分、あのサルよりはずっとましだと思った。

後ろの座席はゆるふわ女子3人旅といった風で最初は何やらキャッキャウフフと熱く語り合っていたものの、そのうちすぐにお通夜になった。イギリスの天候でさえきっとこう劇的には変わらないだろう。猫と女の子は永遠の謎と言うほかない。

名古屋駅に着いたのは12時半すぎ。そこでJR南紀に乗り換えた。ホームの売店でマネケンのワッフル、ジャスミンティー、味噌カツサンドを買った。

もし最後の晩餐のスイーツは何がいい?と聞かれたら間違いなくマネケンのワッフル(プレーン味)と答えるぐらい、僕はこのワッフルがどうしようもなく好きだ。ラゾーナ川崎への出店を知ったときはさすがに嬉ションを禁じ得なかった。

小田原から名古屋まではこだまの場合で約2時間。名古屋から熊野市までは約3時間30分。合計5時間以上。つまり直行便のタイとほぼ同じ。・・楽しかったなあ、タイ。夜遊び三昧で金がみるみるうちに溶けていったっけなぁ。マッサージ屋のあの娘は元気にしているんだろうか。

電車ほど読書が捗る空間はない。到着までの間ひたすらキンドルと見つめ合った。履歴を見返してみると、この時読んでいたのはルソーの「孤独な散歩者の夢想」だったようだ。まったく実に僕らしい。

そして16時すぎ、ついにそのときは訪れた。ホームに煌めく「熊野市」の看板。

その何の変哲もない看板を、あたかも野生のボルネオヤマネコを撮影するような緊張感でもってカメラに収めようとする一人の男がいた。

中山靖王の末裔だと自称するその男は、母のために茶を手に入れようとこの辺境の地まではるばるやって来たという。字は玄徳。のちの蜀漢初代皇帝、その人である。

~続~(大丈夫、続かないよ)

改札を抜けると、オレンジ色の街が出迎えてくれた。夕暮れのせいでも色眼鏡をかけていたせいでもない。それに実際はどんより灰色の曇り空で今すぐにでも雨が降ろうとしていた。

でもなぜか当時の僕にはそれがやけにオレンジ色に見えた。同時に、何十年かぶりに故郷に帰ってきたかのような懐かしさもこみ上げてきた。

宿の予約はしていなかったが、候補は一応いくつか決めてあった。まずは第一候補の「わがらん家」へ向かうことにした。その道中、案の定雨が降り出してきた。しかも結構な勢いで。昨日に続き濡れ濡れ。

うっかり通り過ぎてしまったものの、何とか到着。引き戸を開けようとしたら何と鍵がかかっていた。ノックをするも反応はなし。諦めて次の宿へ向かおうかと踵を返したその刹那、がらりと戸が開いた。

次号へ続く。

後記

ここまで読んでいただいた変態の皆様、どうもブタ野郎。4話目にしてようやく熊野に到着。いやー長かった。要領が悪くてどうもすまんこ。

●読後のデザートBGM

次号はこちら。

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