このサイトには広告が含まれています

おかえり

買い物を終え、家までゆっくりと自転車を走らせる。
遠くの方に夕日がちらりと見えたその刹那、
ああ自分はどこにも属していないんだ、とふと思う。

誰かに仲間外れにされたからじゃない。自らそう望んだことだ。
だからたとえ寂しくても、うっかり口に出してしまわぬように。
そんなことをすれば、今度こそ本当に「仲間外れ」にされてしまうから。

家に着いて、小さく「ただいま」と言う。もちろん返事はない。
でも今度は寂しくなかった。
僕が属する唯一の「場所」に戻ってこられたから。
そしていつものように、その身を雑事に投げ込んで、つかの間の充実を得る。

今日を終える頃にはまたきっと「僕は大丈夫」と嘘の上塗りをするだろう。
なかったことになるその前に、今の思いをここにちゃんと書き残しておこう。
誰にも言わない代わりに僕にだけ、こっそり本当のことを教えてあげよう。

夕暮れ空をまっすぐに見られるほど、僕は前向きな人間じゃない。
自分は大丈夫だと言い切れるほど、僕は丈夫な人間じゃない。
友人の活躍を素直に喜べるほど、僕は立派な人間じゃない。
孤独と退屈を受け入れられるほど、僕は勇敢な人間じゃない。

けどそんな自分を嫌いになれるほど、僕は薄情な人間でもない。

個人ブログ自選その87
同日投稿分より

※音声作成「VOICEVOX: ずんだもん

コメント欄

タイトルとURLをコピーしました